セレブなビジネスマン御用達の小さな空港。金融街・シティーと鉄道・DLRで直結、他では見られないユニークな飛行機が次から次へとやってきます。
by Sunil060902 via Wikimedia Commons
こんにちは、ロンドンナビです。
きょうは、ロンドン東部にある空港「ロンドン・シティー・エアポート(LCY/London City Airport)」についてご紹介しましょう。ロンドンの空港といえば、一般的に世界最大級の国際空港「ヒースロー」を思いつく人が多いでしょう。でも、ロンドンの市域内にあるのはこのシティー空港のみ、なんです。「知られざる空港」の感さえありますが、実はビジネスマンが欧州の主要都市に飛ぶのによく利用しています。
シティー空港の立地と沿革
この空港があるロンドン東部はかつて、工業地帯そして世界中の物資が出入りする港湾地区でした。貿易船が発着する埠頭がたくさんあったのですが、船の大型化により、テムズ川を遡ることが難しくなったため、下流に港を移しました。使われなくなった埠頭や荷役倉庫の跡地は住宅やオフィスビルに改装、建て替えられています。高層ビルが立ち並ぶカナリーワーフも元は貿易船の埠頭でした。
開港式の記念プレート。元ダイアナ妃が式典に出席しました
シティー空港のある場所は「ロイヤルドック」といい、全長1500メートルを超える長い桟橋がありました。ここを滑走路として新たに空港を作ったわけです。
シティー空港発着の機体はこんな感じです
ただ、埠頭を改装した程度の滑走路ですから、機体が大きくて重い飛行機は飛べず、短い滑走距離で離着陸できる小さな機体しか乗り入れできないのです。それでも、欧州のビジネスマン需要が高い主要都市への充実したネットワークを誇っています。
実際に足を運ぶと、普通の空港ではまず見かけない小さな飛行機がずらり。機内は「大型観光バスよりちょっと長いくらい」と、短距離地方路線を乗り慣れている人でもなければ「この飛行機、小さいなあ」と思うことでしょう。
なぜ「シティー空港」と呼ばれる?
「シティー」とは言うまでもなく「都市」の意味です。でもロンドンで「シティー」といえば、各国の銀行や証券会社が集まる「金融の中心地」を指します。「シティー空港」は金融街シティーに出入りするビジネスマンの利用を見越して作られました。空港とシティーのある「バンク(Bank)駅」との間は、無人交通システムのドックランズ・ライト・レールウェイ(DLR)により直結、30分足らずで着きます。
空港ができたのち、シティーそのものが手狭になったことにより1990年代以降に造成された新金融街カナリーワーフが誕生しました。数万人が働くこのエリアからなら20分ほどで空港に行けます。
どこへの便が飛んでいる?
シティー空港からは意外と多くの便が飛んでいます。
主な乗り入れ航空会社は地元のブリティッシュ・エアウェイズ(BA)をはじめ、ルフトハンザ、スイス航空、エールフランス、KLMオランダ航空、アリタリアなど。さらに2014年から地方路線を専門に飛ばすフライビーという会社が新たに乗り入れました。これにより、英国国内線とアイルランド行きが一気に増えました。
一方、格安航空(LCC)と呼ばれる会社は一切乗り入れていません。ビジネスマンに対し、良質でかつ定時運行率の高い便を飛ばすことで信頼を得る努力をしているからです。従ってシティー出発便のチケットは概して高め傾向にあります。
待合室全体がラウンジのよう
目的地は、パリやフランクフルト、アムステルダム、ジュネーブ、チューリッヒ、ローマといった各社のハブとなる都市を中心に、数は多くないですがリゾート向けの便も出ています。
また「超ハイパーなビジネスユーザー」用に、ビジネスクラスのみ32席設けられたBAのニューヨーク行きという便もあります。行きはアイルランドで一度着陸して燃料を追加するという段取りがありますが、それでも利用客には好評です。
シティー出発便のチケット
シティー空港からの便を利用する場合、片道チケットで何処かへ行こうとすると、定価かそれに近い運賃でしか設定がありません。たまに時間帯が悪い便で相対的に安めのものもありますが、それでもヒースロー発などと比べると高めです。これは他ならぬ「航空券は往復で買うと安い」というレガシーキャリア(LCCでない普通の航空会社)のポリシーがあるからです。
なお、往復で買う場合、ヒースロー発着便と組み合わせても構いません。たとえば、シティーからドイツに行き、帰りはヒースローに戻るとか、パリからヒースローに行き、シティーからパリに戻る、といったようなものです。
日本発着で利用するには?
フランクフルトで出発を待つシティー空港行き
日本発欧州往復のチケットで、シティー空港行きを組み合わせることができます。
例えば、ロンドン東部に用事があるという旅行を考えてみましょう。日本から直行便でヒースローに着き、そこから地下鉄などを乗り継いで目的地に行くよりも、フランクフルトかアムステルダム経由でシティー空港に行った方が「door to door」の所要時間は短くて済みます。例えばANAの場合、フランクフルトーシティー空港間にルフトハンザとの共同運航便を設定しており、日本からの便に接続しています。
検索サイトを使ってチケット購入の際、シティーへの便に乗る時は、空港名をLCYとして予約してください。LONと入れるとヒースローと両方が出てきてしまいますし、LHR(ヒースロー)と入れると、シティー発着便はほぼはじかれます。
フランクフルトからシティー空港までは約90分
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羽田からフランクフルト経由でシティーに飛べます
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ロンドン・シティー空港の紹介、如何でしたか?
同空港を使う最大のメリットは、「入国審査の列がとても短い」ことです。到着する飛行機が小さい上、ほとんどの乗客が簡単な審査で済む欧州連合(EU)国民だからです。そんな事情もあって、ナビ自身もよくこの空港を利用しています。
そもそもこんな空港があることさえ知らなかった人もいるのではないでしょうか?
次回の旅のプランにぜひ加えてみてくださいね。
以上、ロンドンナビでした。