学問と宗教の町、ケンブリッジを歩く~セントジョーンズカレッジ編~

パリのサントシャペル教会のデザインをそのままにとりいれたというチャペル。ヴィクトリア女王が「なんて絵になるのかしら」と絶賛した眺めをもつカレッジをご紹介!

こんにちは!ロンドンナビです!イギリスといえば、ゴーストがお金になる国。ゴーストがいる家が高く売れたり、ゴーストが出るパブは大人気となります。今回は、そんなゴースト話があるカレッジをご紹介しましょう!「えっ!幽霊が出るの?そんなこわいカレッジへ入るのはちょっと・・・」なんていわずに、勇気をだして、ナビといっしょにカレッジをのぞいてみましょう!!記念撮影したら、意外なものが写真にうつるかも!?
グレートゲートからの眺め

グレートゲートからの眺め

教会の壁

教会の壁

緑溢れるニューコート

緑溢れるニューコート

ウェディングケーキとよばれる建物

ウェディングケーキとよばれる建物

ため息橋

ため息橋

いろいろな場所に紋章が

いろいろな場所に紋章が

セントジョンズカレッジ(St john's College)

病院の敷地にたてられたカレッジ
セントジョンズカレッジは1511年、セントジョン病院の敷地に建てられました。カレッジの名前の由来はここから来ています。創設者はヘンリー7世の母、マーガレット・ボーフォート (Lady Margaret Beaufort)。彼女は信心深く教育に熱心な女性だったそうですが、ただ残念ながら、カレッジの着工前になくなってしまったとか。カレッジは創立後500年をかけて、ケム川の西部へ徐々に広がっていき、現在はケンブリッジ大学の中で最も多い11のコートをもつまでの大カレッジとなりました。ケンブリッジ大学のひとつにクライストカレッジというカレッジがありますが、そのカレッジもマーガレットボーフォートが創立。だからセントジョーンズカレッジとクライストカレッジの校章は同じなんです。
セントジョンズの紋章

セントジョンズの紋章

病院の跡が残されている

病院の跡が残されている

フロントゲート(The Front Gate)

彫刻に記された紋章と聖人の伝説
フロントゲートに掲げられているのは、セントジョンズカレッジの紋章。鹿のような動物に守られています。自由に回転する角をもち、象の尾、レイヨウの胴体、そして羊の頭からなっているこの動物は、想像上のものだそう。両脇には創立者マーガレット・ボーフォートのシンボル(右:格子戸)と、ランカスター家の紋章(左:赤薔薇)。その上には聖書「ヨハネの福音書」の著者といわれているセント・ジョン(St .john the Evangelist)。足元にはセント・ジョンの象徴である鷹がいます。そして手には聖杯をもっています。この彫刻は、魔法を使って聖杯に入っていた毒を蛇の形にして取り除き、無事に杯をのみほした、という彼の伝説をあらわしています。
神話上の動物とランカスター家の紋章(左:赤いバラ 右:格子戸)

神話上の動物とランカスター家の紋章(左:赤いバラ 右:格子戸)

修道士セントジョン

修道士セントジョン

学生たちの玄関でもある

学生たちの玄関でもある

ファーストコート(First Court)

コートに歴史あり~カレッジの苦悩~
ファーストコートの右側はチャペル、左側は学生寮と談話室、ポーターズロッジ。ポーターズロッジとは、寮の玄関のようなところ。学生が郵便物をうけとったり、掲示板でインフォメーションを確認したりします。カレッジの歴史はこのファーストコートから始まりました。カレッジが病院の敷地に建てられたということは先ほどご紹介しましたが、ここには病院の病棟、教会、図書館、ホール、炊事場がありました。清教徒革命の時代、ケンブリッジ全体が議会派であったにもかかわらず、カレッジは国王派だったため、かなりの苦労があったとか。当時コートは刑務所として使われていたこともあるそう。厳しい歴史をかいくぐり、現在にいたっています。

セントジョンズのカレッジゴースト① ~闇を横切るゴーストの群れ~
さあ、言い伝えられているカレッジゴーストについて、ひとつお話しましょう。複数のフェロー(大学関係者)たちがこのコートでゴーストを目撃しています。夜、フェローたちがコートを歩いていると、すべるようにコートを横切る数体の黒い影が。驚いたフェローたちは銃をもちだし、ゴーストにむかって発砲。ゴーストは低いうめき声をあげながらカレッジの反対方向へ消えていったといます。また、敷地内にはゴースト狩りを行った跡も残されているとか。

チャペル(The Chapel)

美しいチャペルはパリのサントシャペルとそっくり!?
ファーストコートの右手はチャペル。ずっしりとした扉の左にはケンブリッジ大学の総長を務め、マーガレット・ボーフォードにカレッジ設立を薦めたジョン・フィッシャー(John Fisher)が。そして右にはマーガレット・ボーフォードが。2つの彫刻の足元がおもしろいんです。ジョン・フィッシャーが踏みつけているのは、「怠惰」。マーガレット・ボフォードが踏みつけているのは「無知」。これらは人が最も誘惑されやすく、最も必要としないもの、とみなしていたのです。つまりはなまけずに勉学に勤しみなさいということなんですね。
重々しい教会の扉

重々しい教会の扉

「怠惰」を踏みつけるジョンフィッシャー

「怠惰」を踏みつけるジョンフィッシャー

「無知」を踏みつけるボーフォード

「無知」を踏みつけるボーフォード

扉をあけると中はアーチ型の玄関ホール。玄関ホールにはマーガレット・ボーフォードの肖像画、「キリスト降下」の絵画が飾られています。内部はカメラ撮影禁止、そしてチャペルは立ち入り禁止ですが、鉄格子の間からのぞくことができます。実はこのチャペル、パリのサント・シャペル (Sainte chapelle)教会ととそっくりなデザインだそう。チャペル建設を依頼された建築家が、その影響を強く受けていたためだとか。

セントジョンズ聖歌隊

世界に響く天使の歌声
セントジョンズカレッジの聖歌隊は1670年の発足。その実力はレコード会社と契約し、200,000枚以上のCDを売り上げた記録を持つほど。世界中をツアーで回っているそうで、もちろん日本ツアーも行ったことがあるとか。聖歌隊のメンバーはすべてセントジョンズのカレッジスクールなどで教育を受けている学生だそう。カレッジチャペルのミサですばらしい歌声を聴くことができます。美しい歌声を、しばしご堪能ください。

セカンドコート(SECOND COURT)とチャペルコート(CHAPEL COURT)

セカンドコート

セカンドコート

チャペルコート

チャペルコート

セカンドコートのすばらしさは、景色に溶け込んだレンガづくりの建物群。その見事な調和は、ケンブリッジにある建造物のなかでも、最も素晴らしいとさえ言われているそう。このコートの北側にあるオリエンタルウィンドウと呼ばれる窓は、中世の名残りをそのまま残しています。そこはイギリスとフランスとの間でチャールズ1世とその妻ヘンリエッタ・マリア(Henrietta Maria)の結婚の成約がかわされた部屋だそう。セカンドコートには、学生たちが利用するダイニングホール、談話室、宿泊施設もいくつかあり、大学関係者が利用できるバーもあります。セカンドコートの右手にはチャペルコートへ続くゲートがあり、ゲートをぬけると円形の庭がでむかえてくれます。かわいらしいこの庭は観光客にとても人気があり、ここで写真をとる人たちがたくさんいます。チャペルコートには図書館があり、学部生は24時間利用できるそう。
オリエンタルウィンドウ

オリエンタルウィンドウ

レンガづくりが美しい

レンガづくりが美しい

図書館

図書館


セントジョンズのカレッジゴースト② ~階段に座るゴースト~
ここでもうひとつ、セカンドコートに住みついているゴーストのお話をしましょう。一日中勉強し続け、疲れきった学生が自分の部屋に戻ろうと階段をのぼっていくと、ある青年が毛布がわりにしたワラでひざを覆い、階段に座り本を読んでいました。「やあ、部屋に戻りたいんだけどそこをどいてくれるかい?」学生がそういうと、青年はパタンと本を閉じました。そして、疲れた学生にいたわりの表情をうかべ、壁に消えてきました。このゴーストは「親切な幽霊」として、セントジョンズカレッジではよく知られています。目撃している学生も多いとか。

サードコート(THIRD COURT)とキッチンブリッジ(KICHEN BRIDE)

キッチンブリッジの横は「ため息橋」

キッチンブリッジの横は「ため息橋」

いよいよセントジョンズカレッジ最大の見所、「ため息橋」へ向かいます。まず、サードコートの左にあるゲートをぬけて、キッチンブリッジへ。文字通り、昔は台所の通路からつながっていたためこの名前がついたそうです。以前キッチンがあった場所はテラスになっています。 実はこのキッチンブリッジ、イギリス建築の巨匠、クリストファー・レンのデザイン。その名前をとって、今では「レンブリッジ」と呼ぶことのほうが多いそう。
サードコート

サードコート

キッチン跡はテラスに

キッチン跡はテラスに

キッチンブリッジの門

キッチンブリッジの門

ケンブリッジ IN ため息橋(BRIDGE OF SIGHS)

パントで橋の下をぬけることができる

パントで橋の下をぬけることができる

ため息橋のなか

ため息橋のなか

藍より青し!?本家をしのぐ美しさ!
「ため息橋」といえば、イタリア・ヴェネツィアの観光名所。牢獄へ向かう囚人が外の景色を見られる最後の場所が、この橋だったためについた名前というのは有名ですね。ケンブリッジの「ため息橋」は、もちろん橋の構造などヴェネツィアの橋との共通点もいくつかあり、この名前がついたのですが、他にもさまざまな由来があるのです。

①カレッジのレベルについていけない学生がため息をつく
②門限をすぎて中へはいれなくなった学生がため息をつく
③試験の出来が悪すぎてため息をつく

みなさんはどれだと思いますか?
もうひとつ、「美しすぎてため息をつく」という説もあります。これが正解かもしれません。なぜなら、ヴィクトリア女王が訪問の際、"so pretty and picturesque".「なんてステキで絵になる橋なんでしょう」といったというのですから!観光客はため息橋をわたることができませんが、レンブリッジからすばらしいその姿をみることができます。ケンブリッジの代表的な観光名所をお見逃しなく!

ニューコート(NEW COURT)

現在お色直し中

現在お色直し中

ナビオススメ!ニューコート
セントジョンズカレッジのなかでナビ一番のお気に入り、ニューコートへやってきました。レンブリッジを渡ると、目の前には一直線にのびる道。そして、一面にしきつめられた緑のじゅうたん。そんな風景の中に、お城のような建物があります。この建物のゲートをみて、何か連想しませんか?そう、結婚式で必ず登場する高いケーキの塔、「ウェディングケーキ」。学生からも「ウェディングケーキ」の愛称で呼ばれ、親しまれているそうです。
どこまでも続きそうな道

どこまでも続きそうな道

リスなどの動物もいます

リスなどの動物もいます

ゲートからつながる廊下

ゲートからつながる廊下

このコートは学生の急激な増加により、宿泊施設を必要とした学生のニーズから誕生しました。19世紀にできた新しいコートですが、スタイルは見事なゴシック調で統一。ゲートをくぐると、1年目の生徒の寮、クリップスビルディング(Cripps Building)があります。
扉には紋章がびっしり

扉には紋章がびっしり

ゴシック調の天井

ゴシック調の天井

雰囲気ある廊下

雰囲気ある廊下

時間があれば散歩するのもいい

時間があれば散歩するのもいい

ランカスター家の赤いバラも咲いている

ランカスター家の赤いバラも咲いている


いかがでしたか、ゴースト話をまじえながらのカレッジめぐり。シックスセンス(第六感)を感じたコートはありましたか? 朝と夕暮れ時は、いっそう幻想的な風景がみられるというセントジョンズカレッジ。昼間とはちがったカレッジの表情を見に来てくださいね!以上、ロンドンナビでした!

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2010-12-17

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